介護士の離職率が高すぎる…3割が「転職したい」理由とは?

介護士、介護施設、利用者

介護施設で起きた介護職員による利用者さんの殺人事件は記憶に新しいと思います。

殺人とまではいかないまでも、低賃金、体力仕事、人手不足で「介護職」そのものに強い不満を持っている方も多いのではないでしょうか?

厚生労働省の「雇用動向調査」によると、介護職に関しては離職率が平成24年度が17.0%、平成25年度が16.6%と他職種に比べ高いのです。

安倍政権が「介護離職ゼロ」を打ち出していますが、こんなもの砂上の楼閣に過ぎません。それは介護従事者の方が最も認識していると思います。

国は大きな政策を掲げているにも関わらず、現場には目を向けようとしない。離職率の高い介護士、増加する要介護者。

要介護者を支える介護職を大幅に確保しない限りは、介護離職ゼロなんて夢のまた夢です。

まずは介護施設の現場の状況や介護職員が抱える不満を私たちが理解しないことには話は進みません。

介護士の離職率が高い原因は「労働環境に対する給料の低さ」

女性

介護士は疲れ切っています。もう限界ですよね。

介護士の離職率が高い理由として「賃金の低さ」「肉体的・精神的な辛さ」「社会的評価が低い」などが挙げられます。

介護職員の賃金は全産業の平均よりも低い

介護職員の人手不足が叫ばれる理由の一つに、「労働内容に給料が見合わないこと」が挙げられます。

厚生労働省が発表した2015年度の介護職員の賃金調査結果を参考にしてみましょう。

その結果によると、平均月給は28.7万円。前年度の調査に比べて1.3万円上がっていました。

深刻な人手不足により賃上げに迫られた施設が多かったのですが、それでも他職種の平均以下です。

介護施設内で見ても介護職員は下から2番目の給料です。同じ施設で働いている看護師37.5万円、生活相談者32.1万円と比較すると、いかに介護職員の給料が低いかわかると思います。

介護士は専門職としての地位が低い?

要介護者と比較して、介護士は圧倒的に足りないのに、どうして給料は上がらないのでしょうか?

同じ専門職でも、システムエンジニアなどは給料が高いですよね。そう考えると、介護スタッフは専門職としての地位がいまだ確立していないことが低賃金の原因とも考えられます。

女性のホームヘルパーや福祉施設従事者の賃金を見ても、勤続年数や年功に関係なくほぼ一定です。

一昔前に比べて少なくなってきてはいるものの、まだまだ年功序列賃金体系の企業や業種は根強く残っています。

長く勤めても給料が上がらないのでは、人生設計がままなりませんよね。

厚労省が見直す「介護職員の資格制度」

現在、国家資格の「介護福祉士」や「介護職員初任者研修」などの資格があります。厚生労働省は、介護職員の専門性が高い順に資格制度を見直すと言うのです。

気になるのは、この制度改正に伴い介護士の給料にどのような影響があるのか。

介護業界は他職種に比べ賃金が低いことから、若い世代への定着率が非常に低いのです。そのため、時間に余裕のある高齢者や主婦も手軽に資格をとれるよう、資格取得制度を見直すに至りました。

しかし、懸念点もいくつかあります。

人手不足を補うことで介護職のハードルを下げてしまい、平均賃金が引き下げになる恐れもあります。

海外の介護業界と日本の介護業界を比較すると・・・

ドイツの介護保険制度では家族介護にも一定の手当てが支払われますし、専門の介護士の給与も地域ごとの格差をなくすよう柔軟な価格制度を導入しています。

しかし日本は地域により給料の格差が大きいです。最高額は東京都の907円で、最低額は鳥取県・高知県・宮崎県・沖縄県の693円です。

最高額と最低額を比較すると約1.31倍も差が生じています。

地域によっても差が生じ、定着率は低くなる一方です。

さらに、東京は最高額と言っても907円。他職種に比べ低いことは一目瞭然です。

すると大都市圏でも、他の産業と競争できない → 人材確保が困難 → 離職率を高める

悪循環に繋がっています。

メーカーから介護職に転職し年収240万円で生活する男性のお話

男性

―「年収350万円もあれば福祉業界では高給取りですね。

社会貢献度の高い仕事ではありますが、まずは給与面から何とかしないと福祉に人材が集まることはありません。

正社員と言えども身分は不安定で低収入です。

ちなみに前職はメーカー勤務でした。メーカーの仕事もいいのですが、やっぱり人に喜んでもらえる仕事がしたいなと思いまして。

当時は手取り15万円前後。収入はメーカー時代は年収650万はもらっていたので、半分以下ですね。

昇給しても手取り20万弱ですね。ボーナスは冬期、夏期それぞれ1か月分です。年収にしたら240万円・・・先が見えず今の彼女と結婚もできません。

シフト勤務ですが週休2日はもらえていますし、夜勤もありますが月に2日程度です。

それに、お世話させてもらっているのは人生の先輩です。自分も元気を分けてもらっているので、やりがいはメーカー時代より感じられますね。

あと職場の人間関係では困っていないので、本当に給料だけですね。

大学の同級生と集まると、給料の話になるんですよ。外資系金融に勤めているやつは年収1300万円、キー局勤務は1000万円・・・僕の給料はネタとして扱われています。(笑)

正直、前職を離れたことを後悔していないかと言われれば嘘になります。介護業界以外の人間からは『大丈夫か?今回のお会計は俺がもつよ』と気を遣われることもあります。

先輩は『自分のやりたい仕事に携わっているのだから気にするな』と言われますが、なかなか・・・

現在お付き合いしている彼女がいますが、結婚しようとは言えません。養える自信がありません・・・

後は、5年前にお付き合いしていた彼女の両親に会ったとき『もっと給料が高く、安定した職に就くなら』と条件を付けられました。ちょっとトラウマです。

昼はコーヒー一杯で済ませるか、近くのスーパーで安いお惣菜を買って済ませます。」

まとめ

データ、推移

厚生労働省によると、10年後2025年には介護職員が全国で700万人になると予想されています。

65歳以上が増えている中、福祉業界の待遇改善を図らない限り介護を受けられない方が出る恐れも。

取り返しのつかないことになる前に、1日でも早く手を打たなければなりません。介護士じゃないからと他人事に考えていると、あなたのご両親、又はあなた自身が介護を受けれられなくなるかもしれません。